第2章 目的を明らかにする:企画の構想
もの作りに取り掛かる前に、構想を書き出します。本章では、よけとるを例に、企画の初期段階で用意する企画の構想について解説します。
2.1 よけとるの企画構想
よけとるの企画構想を紹介します。開発に必要な情報をまとめたものです。いわゆる企画書とは別のものです。
企画書は、開発の許可や予算を獲得するために、他者を説得するために作るものです。企画の構想は、自分たちが作りたいものを明らかにするためのものです。企画書は、プレゼンする目的に応じて、構想をもとにして作成します。
2.1.1 プロジェクトの目的
設計の経験を積むこと。
2.1.2 基本情報
- 作品テーマ
- コンセプト
- ゲーム概要
- ターゲット層
- プラットフォーム
- 入力デバイス
- マウス / キーボード / X-boxコントローラー
- プレイ人数
- 画面解像度
- 開発環境
2.1.3 企画の狙い
- 挑戦と感情
- 手段と目的
- キャラを移動操作して、障害物にぶつからないようにコインを全て取る
- ターゲット対策
2.1.4 ゲーム画面のイメージ
図2.1: ゲーム画面のイメージ
2.1.5 世界観
海賊が、爆弾をよけながら、コインを集める。
2.1.6 操作方法
- 移動
- WASD / 矢印キー
- ゲームパッドの左スティック / D-pad
- マウスの移動量(速度制限あり)
- 決定
2.1.7 ルール
- プレイヤーが障害物に触れると、ゲームオーバー
- すべてのコインを回収したらクリア
- コインは、取った時の残り秒数に応じた得点が入る
2.1.8 面白い場面の具体例
- 開始カウントダウン中の無敵時間に障害物とコインの動きを見極めて、最適な位置からゲームを開始する。思い描いた操作で敵を避けながら、すべてのコインを回収する
- 決まったタイミングで動く障害物の動きを見極めて、的確に操作する
- 動き回る障害物の経路を予測して、効率よいルートで移動
- 狭い中を上手に操作
- コインを取った得点計算を反比例のグラフ状に減らすことで、開始時のわずかな時間差が得点に大きく影響するので最初から大きくリスクを取る遊び方になる
- 他のプレイヤーとスコアの競い合い
2.1.9 ゲームのプロット
フルスペックのゲームの進行案です。
- ゲームに登場するキャラや操作方法を書いたタイトル画面
- クレジットリンクをクリックしたらクレジット表示。閉じるボタンで戻る
- プレイヤーを操作して、画面内のコインをすべて取ったらゲーム開始
- 静止爆弾に触れたら、最初の状態に戻す
- 3→2→1のカウントダウン。カウントダウン中は、プレイヤー、障害物、コインはすべて静止
- Go!!でゲーム開始
- 爆弾に触った
- ゲームを停止
- ゲームオーバー表示
- ハイスコアの更新の確認と表示
- 操作したら、タイトルヘ
- コインをすべて取った
- CLEAR!!を表示してファンファーレ
- ファンファーレが鳴り終わって、操作したら、次のステージがあれば次のステージへ。最終ステージならオールクリア画面を表示
- オールクリア
- クレジットを表示
- 一定時間が経過するまでは操作禁止
- 操作したら、タイトルへ
2.1.10 試遊(テストプレイ)版のプロット
いきなり完成を目指して開発をはじめる前に、企画が有望かを確認するための試遊版を作るのが一般的です。元のプロットから、企画の面白さが確認できる最小限の要素に絞って、プロットにします。
- シーンに配置したオブジェクトを表示したタイトル画面
- 3→2→1のカウントダウンから、Go!!でゲーム開始
- 爆弾に触った
- ゲームを停止して、ゲームオーバー表示
- 一定時間、操作は禁止
- 操作したら、タイトルヘ
- コインをすべて取った
- ゲームを停止して、CLEAR!!と表示。ファンファーレを鳴らす
- 一定時間、操作は禁止
- 操作したら、次のステージか、オールクリアヘ
- オールクリア
- オールクリア表示
- 一定時間、操作は禁止
- 操作したら、タイトルへ
2.1.11 プレイヤーや登場キャラクター紹介
プレイヤー
海賊。ボートを漕いで、海に散らばったコインを集める。
爆弾
- 触れると爆発する危険物
- 停止している普通の爆弾、決まった軌道で移動する黄色い爆弾、跳ね回っている赤い爆弾の3種類ある
コイン
- 停止している銅貨、決まった軌道で移動する銀貨、跳ね回っている金貨がある
- ステージ内にあるすべてのコインを取ったらクリア
障害物
- 行く手をさえぎる障害物
- 触れてもミスにはならない
- 岩や、決まった軌道を移動する木箱がある
2.1.12 ステージ案
- 静止物の障害物と取るもの+決まったルートで移動する取るもの
- 静止している壁がたくさん+一定ルートの障害物+静止取るもの
- 障害物がたくさん跳ね回っている+静止していたり、決まったルートの取るもの
2.1.13 保留案
実装は予定していませんが、時間があれば追加したい要素です。
- ゲーム内容を転換する要素がほしい。一定の条件を満たすと、一定の時間、爆弾を体当たりで壊せるなど
- 遅くて、常にプレイヤーを追ってくる爆弾
- 一定時間ごとに、プレイヤーがいた場所をターゲットにして、一直線に飛んでくる爆弾
- 旋回の角度が決まっているホーミングで追ってくる
- 加速ホーミング
- ネットスコアランキング
2.1.14 企画構想のまとめ
よけとるの構想を紹介しました。達成すべき目的は、設計の勉強としました。ゲームの面白さや、たくさん遊ばれる、売れるなどは、気にしないということです。欲が出ると、ゲームの企画はすぐに肥大化して、完成が遠のきます。達成目的を決めておくことで、達成できなくても構わないものに対して、腹をくくることができます。
プラットフォームは、企画立案と同時に決まっているものと思います。プラットフォームが決まれば、画面の解像度や、入力デバイスも決められます。決められることは、後回しにせずに決めて、明文化しましょう。操作方法とルールも、決め次第、書き出します。
ゲーム画面のイメージも大切です。想定した画面解像度にあわせた枠線の中に、キャラやUIを描きます。画面の枠線は重要な要素なので、必ず描きましょう。キャラは、大きさと、表示される位置、カメラのビューが分かるようにします。形状は、丸や四角、棒人間などの簡略化したもので構いません。カメラのビューとは、トップビューやサイドビュー、FPS視点、TPS視点といったものです。サムネイルを描くことで、ゲームが想像しやすくなります。
世界観は無くても構いませんが、金属質な感じとか、レトロゲーム調など、画面の雰囲気は決めた方がよいです。
面白い場面の具体例は、ステージ全体を揃える必要はありません。ある場面の状況を示して、操作方法と、それによって起きることを説明して、ゲームの面白さを具体的に示します。パズルゲームであれば、問題の一部を何パターンか示すとよいでしょう。アクションゲームなら、ウリとなる操作が効果を発揮するマップの地形と敵の配置を示して、面白さを想像できるようにします。この段階で具体案が出ないまま開発を進めると、ステージが作れなかったり、面白くならずにボツになるのが通常です。ここで具体案を出せるかが、企画を進めてよいかの指標になります。
面白い場面がいくつも挙がるようなら、有望な企画と言えます。ゲームを開始してから、ゲームオーバーやクリアする流れを考えて、ゲームの全体像を把握します。それをもとに、必要最小限のバージョンである試作版、あるいは、MVP(Minimum Viable Product)などと呼ばれるバージョンの構成を考えます。必要に応じて、キャラ紹介などを書き加えれば、企画構想はできあがりです。